プロジェクトが価値を実現するために。価値の意味と必要なもの

PM Handbook by Repsona
プロジェクトが価値を実現するために。価値の意味と必要なもの

前章では、プロジェクトマネジメントとは何かをみてきました。プロジェクトを管理すること、それ自体が目的ではなく、プロジェクトが本来「ゴール」と定めているものに向かって、チームを導き、成果を上げることが、プロジェクトマネジメントでした。

それではプロジェクトのゴールとは一体なんでしょう。

プロジェクトは通常、会社や組織などより大きな体系の中のひとつとして存在します。それらの組織は組織と関わる人たち、例えば会社の社員や、会社が提供するサービスの利用者、取引先や自社を取り巻く社会などに対して、価値を提供していきます。この価値の実現を基準として「ゴール」を定めるプロジェクトが多いでしょう。

価値を実現するとは?

プロジェクトが価値を実現するとはどういうことでしょうか。

  • ユーザーにとって良いサービス、機能を作り出す
  • 会社が社会貢献をする、作業の効率を上げる、組織に良い変化をもたらす
  • 現在の良い状態を維持する

こうした価値を実現することが、多くのプロジェクトにとってその存在意義であり、プロジェクトチームはこれらを実現するために、日々仕事を前に進めているといえます。

プロジェクトがより良い価値を実現するために、他のプロジェクトとの関わりや、定常業務との関わり、プロジェクトが属する組織との関わりが重要となってきます。これらすべてをPMBOKでは「価値実現システム」と呼びます。

プロジェクトを正しく導く情報の流れ

あなたのプロジェクトや他のプロジェクト、組織の上層部や定常業務など、価値を実現するために関わる人やチームは多岐にわたります。これらの人やチーム間で情報が正しく共有され、組織全体が目指す方向とチームの方向が一致している時、価値実現システムは最も効果的に機能します。

組織の戦略や組織として望ましい結果、望む未来を、プロジェクトチーム、運営チームに正しく共有し、プロジェクトチームや定常業務を行うチームは、それらに基づいた現状報告やフィードバック、改善のための情報を提供するように、相互に情報が循環するように流れている必要があります。

プロジェクトにとっての組織の役割

組織やプロジェクトが価値を実現するために、組織はプロジェクトに対して、正しい方向性を示すことが重要です。組織全体での情報の流れを正常化し、課題を明確にし、ビジネス上の重要な意思決定を行います。正常に機能しない組織に属するプロジェクトが、正常に価値を提供することは難しいでしょう。

プロジェクトにとっての人の役割

プロジェクトを進めるのは「人」です。人がそれぞれの役割を果たしてプロジェクトは前に進みます。このような役割を置き、このように分担すれば必ずうまくいくという方法はありません。しかし、プロジェクト全体の作業を明確にし、調整をし続けることが、プロジェクトを成功に導くためにはとても重要です。

中央集権的なリーダーが全体を統括して役割分担を明確に支持するのがあっているチームもあれば、チームメンバーそれぞれが自己組織化し自立して自己管理する分権的な状態があっているチームもあるでしょう。それらをうまくハイブリッドで組み合わせた状態が最も成果を出せる場合もあると思います。

チームがどのような形を望むのか、よく話し合い、よく納得してプロジェクトをはじめましょう。その上で、プロジェクトとして必要な役割と、プロジェクトメンバーが得意なこと、苦手なことなどをよく理解し、各メンバーがプロジェクトの中でそれぞれの役割を果たしていくのが望ましいでしょう。

以下にプロジェクトを構成する人の役割の例をあげます。名称や役割は例で、組織でそのように呼ばれている人という意味ではありません。また、複数の役割をひとりが果たしたり、ひとつの役割を複数名で果たす場合もあるでしょう。

リーダー役

プロジェクトが「ゴール」に向かって進めるように、作業を明確にし調整します。プロジェクトチームをどのようなものにするかを決め、計画をたて、チームをコントロールします。チームメンバーの健康や安全、心のケアも含め、プロジェクト全体を見渡すのが仕事です。上司や経営層、外部との交渉や、それに必要な資料作成などを行うこともあるでしょう。

ガイド役

プロジェクトが生み出そうとしている価値の方向性を正しく導く人です。具体的にどのようなこと、ものが本当に価値となり得るのかについて、意見ができる人たちです。例えば、なんらかの課題を解決するシステムを作るのであれば、その課題を持ちシステムを実際に使う人。新しいアイディアがあるのであれば、それを具体的に表現できる人。何か作りたいものがありそのための資金を提供する人などです。

多くのプロジェクトの場合、プロジェクトは開始時にゴールを定めても、着手時にまだ不鮮明な部分を残すことは大いにあり得るでしょう。成果物が少しずつ仕上がっていく過程で、ガイド役からの定期的なフィードバックが非常に重要なものになってくるのです。

ファシリテーター役

プロジェクトメンバーそれぞれが仕事を前に進めていく中で、チームとしての意識を共有し、アウトプットに責任感を持てるように導きます。チーム全体の合意形成、意思決定やコンフリクトの解消を主導します。必要に応じて会議を調整し、会議の目的を明確にし、進行します。

実行役

実際に作業を行い、プロジェクトの価値を実現するために、知識やスキルを提供します。プロダクト開発であればプログラマー、建築であれば大工がこれにあたります。与えられた作業を行うだけでなく、実行現場での状況の共有、改善案の提案などを通じて双方向の情報の流れを作ることも重要です。新しい知識やスキルを習得し、生産性を向上すること、また、新しいメンバーの教育が求められる場合もあるでしょう。

専門家役

実際に作業を行うことはないものの、プロジェクトに必要となる専門知識をもつメンバーです。プロジェクトチームに仕事の方向性に関するアドバイスやサポートをしたり、現場の作業の正確さをチェックして指摘をすることもあります。

課長役、部長役、社長役

プロジェクトのゴールの方向性を明らかにします。他のプロジェクトとの優先順位をつけたり、組織全体での意思決定や資源の分配を決定します。プロジェクトチームが単独では対処できない問題などを把握し、それらに対応するために動きます。これらの役割の人たちは、プロジェクトチームからの声に耳を傾け、組織の方向性とプロジェクトの方向性の一致を維持し、プロジェクトチームを孤立させないようにします。

プロジェクトの環境

プロジェクトは単独では存在できません。プロジェクトが存在する組織の内部環境、それをとりまく外部環境からなり、これらはプロジェクトにとって良い影響を与えることもあれば、悪い影響を与えることもあるでしょう。

プロジェクトの内部環境

内部環境は、プロジェクトが所属する組織、他のプロジェクト、すでにあるプロダクト、定常業務、これらの組み合わせなどがそれにあたります。これまで行ってきたプロジェクトの実績、経験、それらの成果物。会社の設備や文化、習慣、従業員やそのスキル、経験。これらがプロジェクトに及ぼす影響は様々です。

プロジェクトの外部環境

内部環境のさらに外側を取り囲む外部環境。これもまた、プロジェクトにとって良い影響を与えることもあれば、悪い影響を与えることもあるでしょう。市場の状況、法律や規制、政治情勢、業界を取り巻く状況、天候などの物理的な状況などです。外部環境は事実上コントロールすることができません。これらの影響を受け、プロジェクトは柔軟に方向性を定めていく必要があります。

「プロジェクトが価値を実現するために」まとめ

プロジェクトは価値を実現することが目的でした。その価値を実現するためには、プロジェクトが行われる組織内部での情報の流れがまず重要となります。正しく情報共有がされ、組織の方向性とプロジェクトの方向性が一致していなければいけません。そして、プロジェクトを前に進める「人」がそれぞれの役割を認識し、仕事を前に進めるために責任感を持ってその役割を果たす必要があります。また、内部・外部の環境に依存しているため、柔軟に方向性を定めながら進めていきます。

仕事に取り組む一人ひとりが、双方向に情報を受けフィードバックしながら、それぞれの役割を果たすことで「価値実現システム」が成立します。上司が作業を与えるだけとか、部下が与えられた作業をやるだけ、ではなく、組織全体がひとつの方向を向き、組織全員がその価値と目的に意味を見出すことで、本当の価値が生まれ、本当のチームワーク、本当の仕事が生まれてくるのです。

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