プロジェクトが効果的にパフォーマンスを発揮するために不可欠な活動領域をみてきました。「8個のプロジェクト・パフォーマンス領域」を定義し、それぞれにどのように向き合っていくのが理想的なのか、結果として効果的にパフォーマンスを発揮することができるのかを確認することができました。
ところで、どのような規模や深刻度のプロジェクトにおいても、同じような視点で、深さで、これらの「パフォーマンス領域」に向き合うことが、必ず良い結果につながるのでしょうか。
プロジェクトの性質に合わせて方法論を適用すること。これをプロジェクトマネジメントではテーラリングと呼びます。PMBOK 第7版ではテーラリングを一つの章としてまとめており、重視しています。
例えば、1人作業で3日で終わる失敗の許されるプロジェクトで、ステークホルダー・エンゲージメントに2日使ってしまうのはおそらく時間の無駄遣いです。10人チームのアジャイルプロダクト開発で、ライフサイクルとデリバリーの定義がなければアプリのリリースはできません。
テーラリングにあたって、プロジェクトをとりまくさまざまな要求のバランスをとらなくてはいけません。例えば、早さ、安さ、より良い価値、より良い品質、法規制などへの対応、さまざまな関係者の要望、変化。これらのバンランスをとりながら、実務的な作業環境を構築する必要があります。
なぜテーラリングするのか、何をテーラリングするのか、どのようにテーラリングするのかをみていきましょう。
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例えば、原子力発電所の建設などの深刻度の高いプロジェクトに必要とされるプロセスやその厳密さは、新しいオフィスビルの建設に必要とされるそれよりもはるかに大きいことは容易に想像できます。
同じように10人のプロジェクトチームで必要な作業プロセスは、200人のプロジェクトチームにそのまま当てはめては不十分です。
プロセスが少なすぎると本来必要な大事な活動を省略してしまう可能性がありますが、必要以上に多くのプロセスを採用すると、コストがかかり、無駄になります。そのため、テーラリングによって作業環境とプロジェクトのニーズに合わせた適切なマネジメントが必要なのです。
それではテーラリングをはじめてみましょう。何をテーラリングすればいいのかは、以下のように案内されています。
また、プロジェクトのパフォーマンス領域に関連づけられた作業もテーラリングすることができます。各パフォーマンス領域でプロセスを簡素化できるものがあるか、重点的に作業をするものがあるかは、プロジェクトの性質によって決まります。
テーラリングは以下のプロセスで実施します。
まず、初期の開発アプローチを選定します。プロジェクトチームが、予測型、適応型、ハイブリット型のうち、プロジェクトの特性に適したアプローチを検討しましょう。
次に、組織に合わせてテーラリングをします。プロジェクトチームはチーム独自のプロセスを実行すると同時に、所属する組織の承認を必要としたり、規則を守る必要があります。また、大規模で安全性を重視すべきプロジェクトや、法規制の遵守などが求められるプロジェクトの場合、必要な承認や監理を追加しなければならない場合もあります。
次に、プロジェクトに合わせてテーラリングします。これはプロダクトや成果物、プロジェクトチーム、文化に影響を与えます。プロダクトやチーム、文化について正しい情報を収集し、プロセス、アプローチ、ライフサイクル、利用するツールや方法を選定します。
そして、継続的に改善を実施します。テーラリングプロセスは1回で終わりではありません。プロジェクト活動を行う中で、テーラリングで改善できそうな箇所が見えてきます。継続的な改善は、プロジェクトチームの責任感や、現状に甘んじることのない、革新と改善のマインドセットにもつながります。
テーラリングとは何か、その必要性と手順をみてきました。テーラリングを行うことで、プロジェクトの性質にあったプロセスや作業環境を構築することができます。どのような組織の中で、どのようなプロジェクトで、どのようなチームメンバーが、どのような文化の中でプロジェクトに望むのかによって、テーラリングの結果は変わってきます。テーラリングプロセスにそって、慎重に適応させる必要があります。
また、プロジェクトのテーラリングは、プロジェクトチームにより実施されることが多いですが、通常プロジェクトが属する組織や別のプロジェクトの影響を受けます。プロジェクトと組織が正しく調和できるように、全体のコミュニケーションが正常に行われていることも大切です。